• 10月18日(木) ゲスト卓話~両国の懸け橋になりたい

    紹介 ロータリー財団・米山記念奨学委員会  委員長 榊原 潤

     10月は米山月間です。この月間にあたり会員の皆様に米山記念奨学会についてよりご理解をいただくため、本日は元米山奨学生の宋 妍(そう けん)さんにお話をいただきます前に米山記念奨学会について若干、説明させていただきます。

     米山奨学事業は、日本最初のロータリークラブ(以下RC)の創立に貢献した実業家 米山梅吉氏の功績を記念して発足しました。1952年に東京RCで始められた同事業は、やがて日本の全クラブの共同事業に発展し、1967年に文部省(現在の文部科学省)の許可を得て、財団法人ロータリー米山記念奨学会となり60年が経ちました。

     事業創設の背景には「今後、日本の生きる道は平和しかない。それをアジアに、そして世界に理解してもらうためには、一人でも多くの留学生を迎え入れ、平和を求める日本人との出会い、信頼関係を築くことこそが、日本のロータリーに最もふさわしい国際奉仕事業ではないか」という思いがありました。

     それから50年以上の歳月が流れましたが、民間外交として世界に“平和の種子を蒔く”という米山奨学事業の使命は一貫して変わっていません。むしろ、今日の世界情勢と日本の置かれている状況を考えるとき、その使命はますます重要性を増しているのではないでしょうか。米山奨学生の採用数は、年間800人。奨学団体としては、事業規模・採用数とも、日本国内では民間最大です。奨学金による経済的な支援だけでなくRC独自の世話クラブとカウンセラー制度による心の通った支援があります。

     システムは、1つのクラブが、1人の奨学生の「世話クラブ」となります。米山奨学生は世話クラブの例会に月に一度出席し、ロータリー会員と積極的に交流して国際交流・相互理解を深めるとともに、ロータリーの奉仕の心を学びます。奨学生1人に対し、世話クラブのロータリアンの中から1人がカウンセラーとなります。カウンセラーは奨学生の個人的ケアにあたるアドバイザーです。様々な職業、世代で構成されるRCでの交流は、奨学生が日本文化に接し、将来や奉仕について考える機会となります。米山奨学生とロータリアンの交流は、相互理解のみならず、双方にとって財産となるものです。このようなロータリー米山奨学会は、日本全国のロータリアンの寄付金を財源としております。

     最後に本例会冒頭に瀧澤会員個人から10万円の寄付がありました。心から厚くお礼申しあげ、また、会員各位には、今年度も米山記念奨学会へのご寄附をお願い申し上げ、宋妍さんの卓話に入ります。

    北海道大学 大学院情報科学研究科博士課程                                                          元米山奨学生 宋 妍(そう けん)さん

      私は小さい時から日本のアニメが好きで、アニメを通じて、日本に関して沢山のことが分かりました。日本は中国の隣国で島国です。国技は相撲で、ITや車産業、新幹線など様々な分野でハイテクを持っている先進国です。両親の関係で、私は日本に来る機会がありました。当時は日本でしばらく遊んだ後、中国に戻って学業を続けようと思っていました。しかし、日本に来て、ますます日本に興味を持ち、学校の教育、アニメから知った学校での部活動。文化や食べ物、景色や生活様式などについて、中国とはどのように違っているかを知りたくなり、日本に残って勉強をすることに決めました。日本語教室へ通いながら中学校の授業を受け、1年半で3年間分の勉強内容を学習し、石川県で2番目に良い県立高校に進学することができました。高校では興味を持っていた部活動に入り、勉強と両立させて、北海道大学に合格しました。

     北海道の景色は大変美しく、私のホームタウンのハルピンと似た気候で私は大好きです。大学の素晴らしい環境の下、勉強と研究を行っています。留学生として一人で生活することは決して簡単ではなく、生計、勉強、生活のことなど全てを自分で考えなければなりませんが、今では「自立」の面ですっかり自信がついています。日本にいる間、電話で「宋です(そうです)」と言って理解してもらえなかった事や、日本人と間違われたり、予備校からの勧誘ハガキが姓名ともに間違っていたことなど、面白いことも沢山ありました。これは特別の体験だと思っています。

      日本と中国は昔から近隣として共に歩んできました。しかしながら、歴史などの関係で、両国の国民はお互いに対する理解は不十分であると私は思います。私は「両国の懸け橋になりたい」といった考えは中学校時代から持ち始め、今もなお、こうなりたいと考えています。両国の懸け橋になって、国民間の交流を行い、互いが理解し、隣国として共に発展していきたいことを願っています。