• 11月22日(木) ゲスト卓話 

    紹介者:職業奉仕委員会 副委員長 浅利美恵子

          本日の例会は、札幌RC在籍の北海道空港株式会社 代表取締役社長 山本邦彦様によるゲスト卓話です。テーマは「新千歳空港の概要と航空業界について」です。私どもにしては興味深いお話でありますので、よろしくお願いたします。

    ゲスト 北海道空港株式会社 代表取締役社長 山本邦彦様(札幌RC)

                  ただ今、ご紹介をいただきました通り、札幌RCの会員です。入会は昨年度からですが、常に千歳RCのメーキャップをさせていただいております。ありがとうございます。本日は新千歳空港温泉「万葉の湯」をご利用いただき、重ねてお礼を申し上げます。

     新千歳空港は、昨年7月にリニューアルオープンをしまして、万葉の湯は昨年7月15日から本年の7月14日までの1年間で21万人(1日平均576人)のご利用をいただいています。ラーメン道場は、110万人で1日平均3千人以上のお客様のご利用をいただいています。月平均9万人以上となります。千歳RCの皆さんには作務衣など着てゆっくりしていただければとも思っていました。

     配布致しました資料は、国際線、国内線の概要について記載し、新千歳空港の置かれている状況、空港ビルを管理しています立場、これからの新千歳空港の「進め方」「発展させるか」についてお話し致します。

     資料の「新千歳空港の概要について」の内容は、第1章総括、第2章国内線の概要、第3章国際線の概要、第4章新千歳空港ターミナルビルの新たな役割等となっています。

     資料2頁は、「主な航空史」についてです。私が航空業界に身を置くように様になり、改めて感じましたことは飛行機の発達について技術のスピード化は自動車や汽車と違い、特に飛行機の歴史は比較的新しいものと言えます。

     ライト兄弟が1903年(明治36年)に人類初の動力飛行機に成功しています。実際、自動車と言いますのは1700年代半ばには蒸気自動車が発明されています。1800年初めには蒸気機関車が発明されています。ところが飛行機は1903年代ですから109年前にライト兄弟がはじめて動力飛行に成功しております。明治36年と言いますと日本では日露戦争が翌年に起きております頃のことです。

     素晴らしい事はライト兄弟が動力飛行に成功した6年後の1909年(明治42年)にはフランスのブレリオがドーバー海峡横断に成功しています。ライト兄弟が飛行した時間は確か2~3分程度の飛行ですから6年後にはプレリオがドーバー海峡38㎞を32分で横断しています。また、1927年(昭和2年)にはあの有名な米国のリンドバーグがニューヨークからパリ間を無着陸横断に成功しています。これはライト兄弟が動力飛行に成功してから24年後です。この間の航空技術の発達は目覚ましいものがありました。実は、第一次世界大戦と第二次世界大戦へと続きますが、ここで航空機の技術が一気に加速し、発達したものです。これはある意味、戦争が航空機の技術を発達させたという皮肉な結果になったと思います。

     日本におけましては、1910年(明治43年)に徳川大尉が陸軍代々木練兵場で公式飛行を成功させています。この時は高度7mのところを4分ほど飛行したようですが、これが日本における公式飛行成功となっています。徳川大尉が公式飛行してから100年後の2010年(平成22年)が「航空100年」となっております。

     皆様にお馴染みの千歳における飛行場の着工は1926年(大正15年)です。1951年(昭和26年)に千歳空港が開港しました。当時は1本の滑走路を民間航空と自衛隊と供用していました。千歳~羽田間は一日一往復から始まりました。それが1988年(昭和63年)に新千歳空港が開港しました。民間エリアと航空自衛隊千歳基地エリアが区分され、現在に至っています。

      資料3頁、4頁は施設の概要」です。

     資料5頁は国内線の概要」ですが、5頁が国内線のネットワークを記載していますが、最近の動きとしては、①「ピーチアビエーション」②「ジェットスター・ジャパン」③「エアアジア・ジャパン」の3つの国内LCCの定期便就航です。いずれも4~3往復運航していますが、情報によりますとピーチが1日4往復ですが12月15日から5往復になります。その他の2社は明年3月までは3往復のままで運行するということです。

      資料6頁は、「国内線旅客の推移」です。

     実は、国内線の旅客数は最近低迷状況にあります。平成14年に1800万人を超えており、これが新千歳空港におけるピーク期の記録です。これが平成23年においては東日本大震災の影響もあり1490万人とピーク時より300万人程の減少です。この間、平成16年の「SARS」、平成21年には「リーマンショック」「新型インフルエンザ」の影響があり、このようなリベントリスクというものが航空業界にマイナス要因があり、業界全体が低迷しています。

     新千歳空港では羽田線搭乗者数が多く、平成18~20年の3年間は1000万人を超えていました。平成23年には840万人と大きく減少しました。ピークに比べて140万に程少なくなっている状況にあります。

     今年はLCCの部分がかなり健闘しておりますので平成22年には1580万人でしたのがこの年に比べて4%程増えております。昨年に比較して10月段階で10%の伸びを見ています。平成22年のベースにLCCの部分が上積みされる状況を見込んでおります。いま、LCCが年間約100万人、うまくいって120万人の利用をいただけるものと腹積もりを持っています。この平成22年の数字に100~120万人を上積みしたような姿になると考えています。

      資料9頁は、「国際線ネットワーク状況」です。

     今、残念ながら大連線と瀋陽線が運休になっておりますが、新たにホノルル線とバンコク線が就航しました。ホノルルとバンコクの2つの線は週3往復が運航しています。先日、ハワイアン航空とタイ国際航空の本社の方にお礼を兼ねて伺ってきました。どちらの航空会社も新千歳空港便に対しては期待をしております。バンコク線の方は当初、冬期便のみでしたが通年運航となりました。ホノルル便の9割ほどが北海道の人が利用するものと思います。ハワイアン航空は出来ればハワイの方々をはじめ米国本土からハワイに来た客に新千歳空港便を利用して貰うようなことを考えており、旅客増を見込んでいます。ホノルル線も週3往復からデ―リー化を考えているようです。ホノルル線、バンコク線ともに期待が持てる路線であると思っています。

      資料11頁は、新千歳空港における「国際線旅客数の推移」です。

     これは新千歳空港の国際線旅客数ですが、平成22年の94万人がピークですが、昨年は83万人となっております。本年度当初は順調な滑り出しで94万人ベースをしのぐ勢いでしたが、今、中国・韓国路線がかなりに部分が運休または欠航となっています。中国船問題では3月末までで240便の運休が決まっており、韓国便も100便の運休・欠航となっています。北海道の調べでは9~12月までの4ヶ月の中国人の団体旅行のキャンセルは約5千人となっています。平成22年9月に尖閣諸島での中国船問題で9月から11月まで中国人旅行客が全く来なくなったことがありましたが、それで94万人でした。漁船衝突事件がなければ平成22年は100万人を越えたのではないかと思っています。あの時は11~12月の2ヶ月に全くダメで1月の中国の旧正月・春節に戻りました。安心しておりましたら3月の3・11東日本大震災で大幅に落ち込みました。今回は、かなり長引くのではないかと言われており、来年の春節時に前回のように回復するかどうか分からないという観測もあり、心配しております。ただ、台湾路線が非常に好調であり、中国・韓国の落ち込み分を台湾路線がカバーしている状況にあります。加えて、ホノルル線やバンコク線が純増となるものと考えています。

      資料12頁、「出国日本人および入国外国人の推移」です。

     ここは出国日本人と入国外国人の年別推移を分解して示したものです。平成12年から14年までは日本人のアウトバウンドの方が入国外国人数を上回っていましたが、平成15年には逆転して入国外国人の方が増加しています。これは台湾線のエバー航空の台北線が就航したことによると見ています。平成15年には圧倒的に増えており、今は7:3の割合で外国人の方が多くなっており、この比率は資料13頁に掲載しています。

     資料13頁は、「出国日本人および入国外国人の比率」です。

     新千歳空港を利用したもので、表のピンクが外国人です。そ割合の数値を下段の「新千歳空港(平成12~23年)割合」として示しています。平成23年ベースで日本人が3割、外国人が7割です。新千歳・羽田・成田・中部・関西・福岡の主要空港の利用状況を見ますと新千歳以外は圧倒的に日本人の旅客が多く、新千歳では、これからもインバウンドよりもアウトバウンドを増やして行かなければなりません。

     資料19頁は、「アウトバウンドの奨励」です。

     新千歳空港においてアウトバウンドが少ない理由について調査した結果です。その理由は、パスポートの所持率にあり、旅券の保有率が北海道の場合、全国比では少なく、千人当たり全国平均242人に対して北海道は153人と全国都道府県中36位となっています。北海道がパスポート保有比率が少ない状況にありますがその理由として、①北海道は広大であり、道民の8割の方が道内旅行で満足している。②残り2割が海外に出ている。③数%の人が海外旅行をする。と言ったことが北海道の方の実態です。

     私は、“なぜ海外に出ない理由”を考えていますが、大きな理由は、パスポートの申請に当たり、簡易に取得できるか否かにあると思います。ここが問題であると思います。

     パスポートの発行権限は知事にあります。札幌の方は本庁がありますのでよいのでしょうが、その他の地域では14の振興局(旧支庁)で申請することになります。今、知事から市町村長に権限が移譲されたのは、98の市町村にとどまっています。全道172市町村中で74市町村ではパスポートの発行が出来ませんので管轄する振興局で申請することとなります。それがパスポート取得するための面倒であり、負担となります。私は、高橋はるみ知事にお話をしておりますが、172市町村全部にパスポート発行権限を移して欲しいと思っています。道民が住んでいる市町村で発行して貰えると道民の方々は簡単にパスポートが取得でき、パスポートを取得すると一度は海外旅行に行ってみようとする人が多くなるものと思います。これこそがアウトバウンドの奨励になるものと思っています。

      資料14頁は、「訪日外国人来道者数の推移」です。

     表のなかでカラ-で表示されていますシンガポール、マレーシア、タイからの定期便が増え、有力な地区と考えています。タイはこの度就航しております。次はシンガポール、マレーシアと言ったところが、北海道に来ることを期待してエアポートセールスをしていきたいと考えています。中国が平成20年度には5万2千人が21年には倍増になっています。22年は13万人ということで確実に増加していますが昨年は311の問題があり、今回のような問題がなければ中国人の北海道への根強さがあるものと思っています。中国をターゲットとしてこれからも進めていくこととなります。

      資料18頁は、11月1日現在の「一部、外国航空機の乗り入れ制限の緩和」です。

     現在、新千歳空港では中国路線、ロシア路線の中国機・ロシア機が乗り入れ制限対象になっています。月・木・金が制限されている時間帯です。金曜日は、17時以降、中国東方航空の上海便は入れますが日中は入れないということです。月・木は一日中入れないという状況にあります。今後、乗り入れ制限を緩和していただくことによって中国機の更なる増便が期待できると思っています。このことが大きな課題となっております。

      資料20頁は、「新千歳空港ターミナルビルの新たな役割」です。

     20頁から24頁までは現在の新千歳空港においてできる限りの「航空利用者への利便性の向上を図るための5つの柱(施策)です。

     20頁は、「インライン検査方式の導入」です。国際線では既に導入しておりますが、国内線の場合、チェックインする前に手荷物の検査が必要です。国際線のように「インライン検査方式」を導入しますとチェックインする前に手荷物検査の必要がなくなります。これは利便性が高く、国内線においても導入することが課題となっています。

      21頁は、人に優しい「ユニバーサルデザインの推進」ということです。

    新千歳空港では既に国道交通省から大臣表彰を受けております。我が国の空港において特に国際線ターミナルビルのユニバーサルデザインはかなり先進的な取り組みをしていると自負をしています。国際線ターミナルビルが完成した時、その時の先進的なユニバーサルデザインを進めていたのが中部空港でした。千歳の障害者の皆様にご協力をいただき、中部空港に障害者の皆さんと一緒に研究させて貰いました。中部空港においてもなお改善すべき余地があるのではないかというご意見をいただき、それを反映したのが新千歳空港国際線ターミナルのユニバーサルデザインです。かなりの先進的なことが国際線ターミナルで施されていると自負をしています。

      22頁は、環境に優しい「省エネの推進」です。

     皆さんもご承知の通り雪を溶かしてそのエネルギーで冷房の約3割を使っています。滑走路の雪を100m×100mの雪堆積場に貯雪しています。その雪を夏場に溶かして冷房のエネルギーとして活用しています。これは世界最大の雪エネルギー貯雪施設です。これをギネス記録に申請してはどうかと提案していますが・・国土交通省の所有のものですから勝手なことは言えません。先般、枝野経済産業大臣に省エネの一環として「雪エネルギー」として注目され、視察に来られました。

      資料の23頁は、「道内観光サービス情報の配信」です。

     4本目の柱として、北海道内の観光サービス情報のターミナルビルから発信すべく、デジタルメディア設備を新設しました。これは内容的にまだまだ不十分なものがありますが、更なる内容の充実を図る努力をして参りたいと思っています。千歳に来られた方が北海道の観光情報を得られるかという仕組みをさらに充実して行きたいと思っています。

      最後、5本目の柱は24頁資料「外国新観光客への北海道の素晴らしさの発信」です。

     例えばアイヌ文化の発信とか北海道産のなら材の使用などに寄りまして北海道を感じとって貰うなどの仕掛けをしております。

     このようにインラインやユニバーサルデザイン、環境、情報、北海道の発信と5つの柱を航空利用される皆様の利便性向上のために取り組んでいるところです。

      資料25頁は「より楽しい空港を目指して~新商業施設の概要」です。

     昨年の7月にリニューアルオープンをしました。それから1年を過ぎましたが数日前に福岡空港の社長様が、昨日は関西国際空港の常務様が視察に来られました。皆さんはたいへん驚いておりました。実は、住吉会長からお話を聞くのでありますが、むかしはこの空港においては商業施設というものは考えなくてもよいと言い、空港においてはお土産物の売買や飲食をすると言うことは考えなくてもよいとされ、国の指導方針であったようです。昭和31年に「空港整備法」ができ、そこで規定されていますのは商業施設やサービス施設などに関する規定が一切ありません。法律名の通りターミナルビルの機能の整備というのが「空港整備法」の目的であります。

     平成20年に「空港整備法」から「空港法」に法律名が変わってハード(設備)からソフト(運営)に方針が変わりました。ある意味で新千歳空港は、平成20年の「改正空港法」の精神を先取りしたと言えます。昭和56年の第三ビルの時も同様でありましたし、平成4年の現ターミナルビルのときも同じですが、その時点から商業施設の整備ということを重点的な取り組みを図ることによって航空利用客の皆様をはじめ地域の皆様にもその空港で楽しんでいただくという理念で取り組んで来ていました。国の方がその考え方が後追いをしている形となっています。

     北海道空港株式会社は、創業時の理念から「航空利用客の方々の利便性の向上」と「地域の振興」の2本柱を51年前に創業されたものです。その会社の理念を実現すべく、その集大成がリニューアルの新商業施設ともいえると思っています。付け加えてこの「万葉の湯」もその一環であると言えます。新しい商業施設の国内空港発の温泉による本格温浴施設「新千歳空港温泉 万葉の湯」や日本初のエアポートシネマ「ジャガポックルシアター」を含めて地域の皆さんにもご利用の上、楽しんでいただける空港施設になることに努力しております。

      最後27頁は番外編として、「人類初の動力飛行は日本人の二宮忠八が・・」についてお話をします。

     実はライト兄弟が人類初の動力飛行に成功したのが1903年(明治36年)ですが、日本では「二宮忠八」という方が、ライト兄弟が動力飛行に成功した10年前の1893年(明治26年)に両翼2mの玉虫型飛行器を完成していました。その時、16馬力のガソリンエンジンを付けて飛ばそうとしたようですが、16馬力のガソリンエンジンを買えなかったということです。当時、日清戦争が勃発した時期で戦争で二宮が作った「飛行器は使えます」と陸軍の上官に直訴したようですが、全く相手にされなかったということです。16馬力のガソリンエンジンは、当時の価格として500円で今の価格に換算すると2500万円ですが、500円を調達できず、買えなかったといことです。二宮が悶々としているところにライト兄弟が10年後の1903年(明治36年)に人類初の動力飛行成功しております。ライト兄弟が飛行した時も動力は16馬力であったということです。誰かが二宮忠八さんに16馬力のガソリンエンジンを与えていたら、実は、人類初の飛行はライト兄弟ではなくて日本の二宮忠八となっていたと言えます。二宮はライト兄弟の動力飛行成功を聞いて、その後は飛行器の製作を止めて、それまでの飛行器などをすべて壊したということです。二宮は飛行器の制作をあきらめたのですが、飛行機の機を「器」にしております「飛行器」という言葉は二宮忠八が作ったと言われています。日本人にこのような人がいたということを最後に余談でお話をさせていただきました。

    本日はこれで終わりとさせていただきます。ご清聴ありがとうございます。

     「謝辞」 会長 村田研一   

      山本社長にはお忙し中、千歳ロータリークラブの夜間移動例会に当たり、「新千歳空港の概況」について卓話をいただきありがとうございます。また27頁に及ぶ資料を作成の上、会員に配布をいただき、ありがとうございます。

     私も事あるごとに新千歳空港を利用させていただき、商業施設にも足を運んでおりますが、山本社長のお話をお聞きして「人にやさしく」「環境にやさしい」そして「思いやり」と「楽しめる場所」になっていると感じました。これからは機会を見て大いに利用させていただきたいと思っています。皆さんも山本社長のお話で新しい発見をしたと思います。ご家族をはじめ身近な人に新千歳空港施設を大いに宣伝して欲しいと思います。本日はありがとうございます。