• 9月26日(木) 職業奉仕員会卓話

    RI第2510地区 職業奉仕委員会 福田 武男 委員長

    福田委員長卓話(1)

    ※以下卓話の概要です。

    ~忘れられゆく職業奉仕~ 
     
     1970年、現在のRI2580地区、東京東RCの神守源一郎氏が地区の職業奉仕委員会の委員になった時に、委員会の話の中で「職業奉仕週間」というのを作ろうという事になった。それが日本全国に拡がり、RIもその効果を認め、1978年に10月15日を含む一週間が、「ロータリー職業奉仕週間」という事になり、1984年には10月が「職業奉仕月間」と指定された。
     しかし、最近では様々な事が原因で「ロータリーの職業奉仕」が分かり難くなってきた。その要因として、
    ⑴ 職業奉仕という言葉が、「職業」と「奉仕」という全く 正反対の言葉を合成したロータリー独特の言葉であるので、理解し難い。
    ⑵ 職業奉仕を理解する為には、ロータリーを理解しなければならないが、ロータリーという概念には完全なる定説がないかもしれない。
    ⑶ 職業奉仕はあくまでも個人で行うものであり、外部から見えない陰徳(人知れず善い事を行う事)である。
    ⑷ 昨今のRCではロータリーの思想などの話は疎んじられ、先輩から後輩へのロータリー思想の継承が以前ほど十分になされていない。
    ⑸ 会長及びロータリー情報委員会が常に「奉仕の理想」を奨励していく事が、例会における役目となっている筈なのだが、その慣例が機能していないクラブが多くなってきたのではないか。
     
     また一方でRIによる職業奉仕の軽視化も大きな原因となっている。
    ⑴ 「ロータリー倫理訓」が様々な経緯の末、廃止される。
    ⑵ 「最もよく奉仕する者、最も多く報われる」という標語がロータリーの第二標語に格下げされる。
    ⑶ 1984年、「決議23-34号」が手続要覧から削除され、1986年に日本からの猛反対で復活する。1985年からのポリオ・プラス推進の為、日本からの財団寄付に水をささないようにする為か。
    ⑷ DLP、CLPの採用で、職業奉仕委員会は奉仕委員会に含まれ、あえて作らなくても良いという小委員会に格下げされる。
    ⑸ 1987-88年度、チャールズ・ケラーRI会長による「職業奉仕はクラブとロータリアンの責任?」、職業を持っていない「クラブ」が職業奉仕をする事が出来るのか。
    ⑹ 手続要覧で、職業奉仕の大切な文言が削除される。(特に1989年、2004年)2004年の文言は・・・、「ロータリーは、職業奉仕という言葉を使用するにあたって、service(奉仕)という文字をその一番広い意味で使っており、単に事業或いは専門職務における取り引き行為や販売された商品を指すのみではなく、相手のニーズと境遇に対して正当な考慮を払い、他人に対していつも思いやりの心を持つ事も指しているのである」・・・このとても大切な部分が削除される。
     
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    ※プレゼンテーション画像です。
     
     現在では「職業奉仕」と言っているが、1927年までは単に「奉仕の理想」とか「奉仕」という言葉だけが使われており、この当時はどちらも当然、職業や事業に関するものとして使用されていた。現在我々が毎例会で使用している「奉仕の理念(理想)」というのは、1915年にグレン・C・ミード国際ロータリー連合会の初代会長が、「私たちは事業や経済活動の中で、同僚に対して高いideal of serviceを与えることができないだろうか」・・・と言ったのが始まりのようだ。しかし1934年頃から、徐々にこの文言は職業奉仕よりも人道的奉仕の分野で使用されるように変わっていく。そしてロータリーの公式名簿 Official directoryの最後の裏表紙に、ideal of serviceとは「他人のことを思いやり、他人のために尽くすこと」と書かれている。では最初にservice(奉仕)という言葉を使ったのは誰なのか。
     それは後世のロータリアンから「ロータリーの哲学者」と言われることになるアーサー・フレデリック・シェルドンである。彼は、1968年5月1日ミシガン州バーノンで生まれ、ミシガン大学経済学部を首席で卒業し、卒業後はワイオミングの草原を自転車に本を積んで訪問販売を行い、そして忽ちセールス・マネージャーに抜擢され、1893年には百科事典の販売の権利が与えられ、1899年には出版社を経営、1902年にはシカゴでビジネス・スクールを開設する。シェルドンはミシガン大学の経営理論の正当性を信じ、サービス学を中核とした販売学を体系的に教える道を選ぶ。そのミシガン大学経済学部の経営理論とは、如何なるものであったか。
     
    「奉仕こそ、すべての事業の基礎である Service is the basis of all business」
    「最もよく奉仕する者、最も多く報いられる He profits most who serves best」
     
     その経営理論においては、物の大量生産が可能になった現在においては、商人は只ひたすら儲かるだけ儲ければ良いという事ではなく、その主役になる商人は物を販売する事によって物心両面の幸せを得るが、顧客も物を得る事によって物心両面の幸せを得る事がなければならない、という事の必要性を説き、すなわち「利己と利他の調和」こそが大切である事を説き、このような境地を「Service(奉仕)」と名付けた。すなわち「利己と利他の調和」=「奉仕」とは、適正利潤によって商人は儲かって幸せになるが、顧客もその商品を買って幸せになるという、両者の調和点がどこかになければならない。これを抽象的な表現で表すと、「利己と利他の調和」=「奉仕」という事になる。そしてロータリーの親睦こそが、この「利己と利他の調和」=「奉仕」の境地を自然体として会得出来る場である事を確信した。このようにシェルドンは、ミシガン大学で学んだ「利己と利他の調和」=「奉仕」こそが、商人と顧客の関係を規律すべき偉大な原則であると考えた。1911年、シェルドンの考えは多くのロータリアンに大いに受け入れられ、それを実践する拠り所として作られたのが、1915年の「ロータリー倫理訓」(道徳律)である。そしてロータリアンの日々の活動において「利己と利他の調和」=「奉仕」が実践されているかを簡単にチェックする事が出来る「物差し」が、ハーバート・テーラーが倒産寸前の会社再生のために作ったという「四つのテスト」である。
     
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     職業奉仕のモットー「最もよく奉仕する者、最も多く報われる」というのは、「何ごとも人からして欲しいと望むことは、人にもそのとおりにせよ」という宗教の「黄金律」と全く同じであるという考え方もある。大意は同じであろうが、「黄金律」では「人間の行うべき理想の教え」であるのに対し、ロータリーの説くところは「一般人間のもつ欲望と他人への思いやりの精神との調和を考えたもの」であるから、少し異なるという考えもある。また、このロータリーの職業奉仕の考えは、東洋の実業倫理とその発想において大変類似している。
     
    ・江戸時代中期の石田梅岩 「石門心学」・・・「誠の商人は、先も立ち、我も立つことを思うなり」
    ・江戸時代後期の二宮尊徳 「報徳の教え」・・・「商人は、売って喜び、買って喜ぶようにすべし」、「金融業者は、借りて喜び、貸して喜ぶようにすべし」
    ・近江商人の「三方よし」の商人道・・・「売り手よし、買い手よし、世間よし」
     
     最後に、みなさんにお願いがあります。
    ⑴ 「グループ合同職業奉仕フォーラム」をしましょう。
    ⑵ 地区委員会で職業奉仕の小冊子を作りたい。1,000冊で一部480円。
     
    福田委員長卓話(2)